垂直思考で「垂直」の庭づくり? | 金沢・新おもてなし考

金沢・新おもてなし考

日本人は本当の日本や日本人の良さを理解しているでしょうか?

金沢の街で日本文化を外国の人にちゃんと理解してもらうため、話し合いましょう!

第35回 国際ポットラックサロン「新おもてなし考」

2008年10月1日(晴)            
 
壁に庭を造った男
      ~アートも植物も そして 言葉も~
 
              

語り手:中西研大郎さん         


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金澤アートカレンダー「EQUAL 」編集者
    

中西さんは大学を出たばかりのその年に、金沢21世紀美術館 の中庭にある植物の壁『緑の橋』(Green Bridge)の施工のすべてを任されました。

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オープンから4年。今もその管理にあたっています。

これはフランス人植物学者パトリック・ブラン(Patrick Blanc)のガーデン・デザイナーとしての作品です。


その傍ら(?) 北陸のアート情報を発信する「イコール」の編集者、ギャラリー「パラ:サイト」の運営など、
まことにクリエィティブな方です。


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■ それにしても、壁面なのに『橋』というのは・・・どうして?

日本人にとって橋は川を「渡る」もの。
でも欧米人にとって橋は「くぐる」ものだそうです。

なるほど、アルルの跳ね橋を連想しました。
因みに、この作品はガラスの通路を跨ぐように作られています。


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「表」の面には世界の植物が、「裏」の面には地元産の植物が植栽されています。

グローバルとローカルが表裏一体。
文化の架け橋ですね。


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■ 常識を覆す厚さ1センチの垂直の壁に、受注すら二の足を踏む企業ばかりでした。
ベテラン庭師たちの反対や危ぶむ声に「枯れたら植え替えればいい。
それは俺がやるから」と美術館のオープンには、ブランの設計図どおりのものを造らせました。

結果は設計者のプランどおり枯れることもなく、アートとして存在しています。
管理のよさは言うまでもありません。

趣味の海外旅行で得たものは、アートや言葉だけではなく「自分でやる」責任感。
植物の管理などもひっくるめて「愛」と呼ぶしかないといいます。


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■ この作品の施工以後、中西さんの会社「四緑園 」には、「緑の壁」の施工依頼が引きも切らないそうですが、片っ端からお断りしているそうです。


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…研大郎さんのお父様にご案内頂きました。


■ 責任感が「EQUAL」の発行につながる?

発刊から4年になる情報誌「イコール」 は彼のポケットマネーから生れています。

金沢21世紀美術館の現況に危機感を抱いてのことと伺いました。

リピータも多く、入場者数を保っているのは、金沢、兼六園、全天候型建物などもありますが、オープン時に購入した作品の良さと“タダ”で観られる魅力に多くを負っています。

世界の美術館のどこもやったことがない、この「荒業」は、最初のコーディネーターがあらゆる圧力を撥ね返したからこそできたことだと、力説されました。

ところが近頃はテーマパークにレベルダウン!企画展の無さが何よりの証拠です。

自治体の経費削減を考慮しても、多分に公務員化した学芸員の体質には苦言を呈さざるを得ません。
責任者がいない組織の弱さは無責任さにつながります。

コネクションよりもクリエィティブ、誰もがもっと自身の力でやってほしいと強く思っている中西さんです。

「美術も出ていない一人の若者が金沢市の文化政策と対等に戦う気なんだといわれたときに、ペンは剣より・・ということを信じて自らメディアを作るしかないのかな」と思ったことが「EQUAL」の発刊につながりました。


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■ イコールは行こう!につながる

それ単体では役に立たないけれど、右と左に何かをつないでいるような雰囲気を持っているこの記号には、例えば美術館やギャラリーと、それを回る人達を繋ぐような役割としてのイメージがあり、響きとして「美術館へ行こう!」「ギャラリーへ行こう!」そして当然、平等の意味もあります。

併せて「パラ・サイト」を読んでくだされば中西さんが 何を感じ、何を考えている人かがわかります。
テーマは「環境」です。

金澤アートイベントカレンダー別冊「pARa:siTe」

中西「アンチ・エコというのは結局、ニーチェじゃないですけど、単なる非難でしかなくてあっちの言葉を単にひっくり返しただけなのではなくて、もう少し冷静に考えたらどうかな、というようなところですね」           

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今回も、フランス人の分業意識や庭園文化、水や緑への希求度など、よって立っている土俵が違うことをはっきりと意識することができました。

あわせて、ご自分の意識を明確に言葉にする中西さんに、人間の成熟度と実年齢とはまったく関係がないことを深く感じ入ったひとときでした。(文責 中島)


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■ 垂直にしてまで植物を、という感覚は、ど根性ダイコンや、家の前に植木鉢や、盆栽を出しっぱなしでいられる国の民には理解しがたいですね。

中西さんは、バビロンの空中庭園をはじめ、彼らの何処からでも水を持って来るエネルギーには感動するしかないといいます。
土木技術の優秀さも含めて。

我が国は湿度、温度、光の3拍子そろった国。有難みを思いましょう

■ この仕事を通して一番の驚きは?
フランス人アシスタントの分業意識だったそうです。

自分の職掌外の部分については疑問も持たず、「知らん」「関知しない」の一点張り。
棟梁が設計から実際の作業までこなす日本ではあり得ない発想ですね。

よって立っている土俵が違うことを明確に意識したいと思っている「新おもてなし考」のメンバーにとって、これは大切なテーマでした。


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■ 後日取材で四緑園を…


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アートスペース パラ:サイト

ギャラリーの一隅に研大郎さんがキュレートしたコーナーが設けられています。

いわば「研大郎好み」?


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また、入口にも21世紀美術館と同様の緑の壁が設えられていて(植えられている植物は違いますが)垂直面にどのように植栽されているかが分かります。


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(植物を植え込んであるポケットに秘密がありそう…)

興味のある方は、21美と違って触ることも出来ますので是非…